散髪ができなかった娘と、今のわたし
みーちゃんは昔から、散髪がとても苦手だった。
「苦手」というより、「できなかった」に近い。
今でこそ22歳のみーちゃんは20分くらいなら座っていられるけれど、やっぱり好きではない。
しかもなぜか、散髪が苦手な子に限って毛量が多い。みーちゃんも例にもれず、美容師さんも驚くほど髪が多い。
だから、髪を伸ばすとすぐに扱いづらくなり、自然とショートカットが定番になっていった。
男の子に間違えられない程度の、すっきりしたスタイル。
通園施設でのボランティア散髪
通園施設では、年に数回、ボランティアによる散髪イベントがあった。
感覚過敏や多動でお店に行けない子が多かったから、本当にありがたい機会だった。
みんな泣きながらも頑張っていたけれど、みーちゃんは…やっぱり無理だった。
抱っこしても暴れてしまって、髪が切れなかった。
なぜ散髪が苦手なのか
あるとき、自閉症の方が書いた本にこう書いてあった。
「髪を切られると、皮膚を切られているように感じる」
それを読んで、腑に落ちた。
そりゃ、怖いよね。痛いよね。
無理に散髪させることは、やっぱり違うと思った。
でも、髪は毎日伸びる。
前髪はすぐに目にかかってくる。
さて、どうしよう。
「熟睡してから切ってみては?」という先生のアドバイス
通園の先生に言われたひとこと。
「みーちゃんが熟睡してから、こっそり散髪してみてください」
それしかないと思った。
みーちゃんが寝て1時間ほど経ったころ、私はハサミを持って枕元へ。
まずは前髪、その後はそっと体勢を変えて横と後ろをカット。
ガタガタでもいい。切れればOK。
布団もパジャマも毛だらけになったけれど、それも仕方ない。
この“寝てる間散髪”、5年ほど続いた。
散髪屋さんへの初チャレンジ
小学校高学年の頃、近所に自閉症児対応の理髪店があると知ってチャレンジしてみた。
最初は私の膝の上に座らせて、スマホで「しまじろう」。
それでも、途中でハサミに手を出したり、大声を出したり……。
「ここから逃げたい」があふれていた。
ドライヤーもNGだったので、カットだけで終了。
クタクタで、やっぱり自宅の方がいいかも…と思った。
貸し切りの散髪屋さんとの出会い
その後、再び自宅カットが約10年。
そんなとき「貸し切りの散髪屋さん」の存在を知った。
料金は少し高め。でも、ほかの人に気を使わなくていいし、なによりスタッフさんが本当に優しい。
みーちゃんにも寄り添ってくれた。
ここではなんと、シャンプーもドライヤーもクリア!
またひとつ、成長を感じた瞬間だった。
今では…
今では、大衆理容店でも、私がそばにいれば短時間なら座っていられるようになった。
長い長い道のりだったけれど、
ひとつずつ階段をのぼって、「みーちゃんのペース」にたどり着いた。
まとめ:貸し切りの散髪屋さん、おすすめです
障がい児対応の貸し切り散髪屋さん、本当におすすめ。
特に、ボランティアカットの経験がある理美容師さんなら、安心感がぜんぜん違う。
どんなに時間がかかっても、その子に合った方法を探せば、きっと「できる日」がくる。
みーちゃんがそうだったように。