生活保護記録

生活保護申請。役所の窓口で現実を知った。


生活保護の相談に行くのは、これが初めてではない。事前に「車を所持してもいいか」を確認しておいた私は、いよいよ本格的に申請に向けて動くことにした。

その日は、家じゅうの書類をかき集めて、役所へ向かった。


■ 手に持っていたのは、現実の重さそのものだった

封筒の中には、必要と言われた書類がぎっしり入っていた。

  • 娘の障がい年金の通知書
  • 銀行の通帳
  • 生命保険と損害保険の証書
  • 国民健康保険証
  • 団地の家賃の領収書
  • 療育手帳
  • 自動車の所有に関する書類
  • 私の個人事業(自営業)の収支明細
  • 確定申告書の控え


■ 窓口で聞かれたこと

職員さんは、私の提出した書類に目を通しながら、いくつかのことを確認してきた。

「お子さんの障がい年金額」「収入状況」「扶養義務者の有無」「車の使用理由」など。

私はあらためてこう説明した。

「娘は発語はありませんが、奇声を上げてしまうことがあります。近所迷惑になる前に、車で一時間程ドライブに連れていくと落ち着きます。これが生活を保つ手段になっているんです」
「あと、要介護2の実母が一人暮らしをしていて、通院の付き添いにも車が必要です」

すると職員さんは、こう答えた。

「お母様の通院のために車を使うという理由では、車の所持は認められません」

──その言葉は、即却下だった。

続けてみーちゃんについては、

「お子さんの状況によるものであれば、所持が認められる可能性はあります。ただし、ドライブによる精神安定のためという理由の場合は、審議対象になります」

と説明された。

実際、みーちゃんは病院での診察が困難なため、訪問診療を利用している。つまり「通院のための車使用」ではない。通院のためなら許可が下りるようなニュアンスだった。でも嘘はつけないから正直に話した。障がいの特性による車所持は、制度上例外として扱われるため、所持の可否は審査にかけられるとのことだった。


■ 通帳と財布の中身、そして“事業用口座”も

さらに、当日の資産状況についても細かく確認された。

「今日現在の預金残高はいくらですか?」
「財布の中の現金は?」
「他に口座はありますか?」

私は正直に答えた。

  • 私名義の口座に約5万円
  • みーちゃんの口座に2000円
  • 個人事業用口座に約2万円
  • 現金7000円

合計約8万円。

私はこう伝えた。

「この2万円は事業に必要な経費のための資金です。生活費に充てると事業が回らなくなります」

しかし職員さんは、

「個人事業であっても、その残高は収入として扱います」

との一点張りだった。

経費として確保しているお金であっても、「生活費に充てることができる」とみなされてしまう。それが制度のルールだった。


■ 個人事業についてのやり取り

さらに、私の行っている個人事業についても多くの質問を受けた。

今年1月から6月までの収支一覧を提出したが、職員さんはこう尋ねた。

「この経費の内訳はどうなっていますか?」
「月ごとに利益にばらつきがあるのはなぜですか?」

私は説明した。

「小売業なので、仕入れが重なる月は赤字になります。月単位で見れば赤字の月もありますが、1月から6月までを合計すると純利益はおよそ3万円程度になります」

「必要な経費があるため、できれば半年の平均で見ていただけないでしょうか」

しかし職員さんの返答はこうだった。

「黒字の月は収入として扱い、その月は保護費が減額になります。赤字の月は満額支給です」

私はさらに伝えた。

「黒字の月でも経費はかかりますし、仕入れを継続しないと事業が成り立ちません」

それでも、

「収入は収入です」

という説明に終始され、話は通らなかった。

事業者としての現実と、制度の枠組みとの間に、大きな隔たりを感じた瞬間だった。


■ 「親族に援助してもらえませんか?」

書類確認のあと、こう聞かれた。

「生活費を援助してくれる親族の方はいませんか?」

私は「いません」と答えたが、一応連絡するとのことで元夫、長女、弟の電話番号を聞かれた。

「形式的なものですが、一応ご連絡させていただきます」

制度として必要な確認だとわかってはいたが、心のどこかでひっそりと傷ついた。


■ それでも申請することを選んだ

一通り、提出した書類についての質問が終わったあと、職員さんから言われた。

「色々審議対象になるものがありますが、申請されますか?」

私はその場に同席してくださっていた社会福祉協議会の方に目を向け、アドバイスを求めた。するとその方は、はっきりとこう言った。

「申請しましょう」

私は深くうなずき、正式に生活保護の申請を行った。

このやり取りだけで、すでに3時間が経っていた。みーちゃんが学校から帰ってくる時間が近づいていたので、それを伝えると、すぐに担当となるケースワーカーさんが来てくださり、自宅訪問の日程を打ち合わせて、その日の手続きはすべて終了した。


私は、その日ひとつひとつのやり取りを終えるたびに、 「これは“申請”というより、“生活のすべてをさらけ出す作業”なんだ」と実感していた。

申請は済んだ。だけど心の中には、まだ波のような疲れが広がっていた。

窓口の担当さんいわく、私のケース(個人事業で売上のアップダウンが激しい、車所持が必要な理由)は珍しいらしい。

次はケースワーカーさんと新居での面談。窓口以上に深堀りされ、現実を突きつけられた話しは次回。

ABOUT ME
よかてん
はじめまして。「よかてん」と申します。 発語のない重度知的障がいを伴う自閉症の娘「みーちゃん」との日々をブログに記録しています。 学校の中でも一番発達が遅かった娘も、今では22歳になりました。 このブログでは、療育や生活の工夫、家族の関わりなど、実体験をもとに書いています。 同じような状況の方や、関心を持ってくださる方の参考になれば幸いです。 わたくしごとですが、2025年、シングルマザーになりました。 障がいがある娘を連れての離婚についても書いていきます。 ご意見・ご感想などございましたら、[お問い合わせフォーム]よりお気軽にご連絡ください。