「親が認知症になったら、実家の名義を変えておけばいいのでは?」 そう簡単に考えていた時期が私にもありました。しかし、いざ動いてみると、そこには法律や制度の厚い壁が立ちはだかっていました。
今回は、母を呼び寄せるために実家の名義変更を検討し、司法書士に相談してわかった「現実」をシェアします。
なぜ名義変更を考えたのか
現在、母は一人暮らしで要介護認定(要介護5)を受けています。 私の自宅近くにある「県営住宅」へ引っ越すことができれば、通い介護の負担も減り、母も安心して暮らせるのではないかと考えたのがきっかけでした。
しかし、大きなハードルがありました。 県営住宅は原則として**「持ち家がある人は入居できない」**というルールがあるのです。
「それなら、今のうちに私の名義に変えてしまえばいいのでは?」 そう思い立ち、専門家である司法書士の先生を訪ねました。
司法書士への相談で突きつけられた「3つの壁」
実際に相談してわかったのは、名義変更は単なる手続きではなく、非常にハードルの高い「契約行為」であるということでした。
① 本人の「意思確認」が絶対条件
不動産の名義変更(贈与など)には、本人の明確な意思能力が必要です。 母には認知症の症状があるため、「自分の意思で子に家をあげる」と正しく判断できるかどうかが厳しく問われます。
② 医師の診断書が必要になるケースも
意思能力の有無を客観的に判断するため、医師の診断書を求められることがあると説明されました。特に要介護度が高い場合、司法書士の先生も慎重にならざるを得ないのが現実のようです。
③ 税金面での大きなデメリット
仮に名義変更ができたとしても、別の問題が浮上します。 名義変更(贈与)から5年以内に売却すると、「短期譲渡所得」として税率が高くなる可能性があるとのこと。「すぐ売るための名義変更」は、税務上もあまり現実的ではないという見解でした。
県営住宅のルールと時間との戦い
さらに住宅供給公社へ確認したところ、さらに厳しい現実が見えてきました。
- 書類提出期限までに売却できない場合は「猶予申請」が可能
- ただし、猶予期間はわずか3か月
- 期間内に売却できなければ、入居資格は失効
この短期間で買い手を見つけ、決済まで完了させるのは至難の業です。しかも、その期間中の家賃負担も重くのしかかります。
ケアマネジャーからの提案と「家族信託」という選択肢
途方に暮れる私に、ケアマネジャーさんはこう提案してくれました。 「成年後見制度を検討してみてはどうですか?」
家庭裁判所に申し立てを行い、後見人が選ばれれば、本人に代わって財産管理ができます。ただ、不動産の売却には家庭裁判所の許可が必要など、これも一筋縄ではいきません。
また、相談の中で**「家族信託」**という言葉も耳にしました。 これは、親に判断能力があるうちに、管理権限を子供に託しておく仕組みです。
「もっと早く、元気なうちに知っておけばよかった……」
正直な感想です。
色んな本がありますね。参考までに。
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制度を正しく理解せずに動くのは危ないと痛感
「持ち家があるから、いざとなったら売って介護費に充てればいい」 そう思っていましたが、状況が変わると、持ち家は「安心」にもなれば「重荷」にもなります。
制度にはそれぞれ理由があるけれど、当事者になるとその複雑さに目が回りそうになります。
「焦らず、ひとつずつ。」
今はまだ、暗闇の中で手探りの状態ですが、一つずつ選択肢を整理していこうと思います。この記事が、同じように「実家の名義」で悩む方のヒントになれば幸いです。