障がいのある子を育てている家庭のあいだで、以前から切実な問題として語られてきた**「18歳の壁」**。
特別支援学校に通っているあいだは、学校終わりの放課後等デイサービスなどの支援につながっている家庭も多いと思います。
でも卒業した途端に、使える制度や通い先が大きく変わり、それまでの支援をそのまま続けることはできません。
この「18歳の壁」が、ようやく国会でも正面から議論されるようになってきました。
2025年6月4日の衆議院厚生労働委員会では、特別支援学校卒業後に放課後等デイサービスが使えなくなる問題が取り上げられ、現状把握、保護者の就労への影響、自治体ごとの支援格差などが論点になっています。
私自身、この流れを見ていて、「ようやくこの問題が表に出てきた」と感じています。
でも、議論が始まるずっと前から、現場の家庭は日々の生活をどう繋ぐかで精一杯です。
国会で議論が始まった「卒業後の支援」
2025年6月4日の衆議院厚生労働委員会では、特別支援学校卒業後に放課後等デイサービスが使えなくなる問題が、まさに焦点として扱われました。
主な論点は、次のようなものです。
- 卒業後の急激な支援不足の現状把握
- 保護者の就労に対する深刻な制約
- 自治体間での支援内容の格差
この問題は、家族の中では前から切実でした。
ただ、これまでは「各家庭で何とか回している問題」として見えにくかったのだと思います。
それがようやく、制度の側から見ても無視できない課題として表に出てきた。そこに大きな意味があると感じます。
「18歳の壁」の正体は、支援の時間軸が途切れること
一般的に「18歳の壁」と言うと、卒業によって放課後等デイサービスが利用できなくなることを指します。
放課後等デイサービスは、学校が終わる15時ごろから18時ごろまで、放課後の時間を一定程度つないでくれる仕組みです。
一方、卒業後に利用することの多い生活介護や就労支援などは、15時半から16時ごろには事業所を出発して帰宅するケースも少なくありません。
その結果、放課後等デイサービスが担っていた夕方までの数時間が、卒業と同時にぽっかり抜け落ちます。
この空白の2〜3時間を、親が移動支援やショートステイ、ヘルパーなどを組み合わせながら埋めていかなければならない。
しかも、その組み合わせは一つでも欠けると成り立たなくなります。
「行き先があるか」だけではなく、生活の時間軸が切れずにつながるか。
ここが、18歳の壁のいちばん深い部分だと思います。
支援の根拠法が変わり、「放課後の居場所」が薄くなる
18歳未満の支援は、児童福祉法に基づく児童の支援であり、成長や発達を支える視点が強くあります。
それに対して18歳以降は、障害者総合支援法に基づく障害福祉サービスへと移っていき、制度の中心は「自立支援」や「介護」に変わります。
もちろん、卒業後も福祉サービス自体がなくなるわけではありません。
実際、医療的ケア児支援法でも、18歳到達後や高等学校卒業後も適切な医療・福祉サービスを受けられるよう配慮すべきことが基本理念として示されています。
ただ、制度の軸が変わることで、児童期には比較的あった「放課後の居場所」という発想が、成人期には薄くなりやすい。
そのため、制度上はサービスがあっても、実際の暮らしの中では「夕方をどうつなぐか」が家庭任せになりやすいのだと思います。
「行き先」があっても「仕事」ができない理由
18歳以降、日中の利用先が見つかったとしても、それだけで親が働けるわけではありません。
現状では、日中の利用先からいったん帰宅し、その後に移動支援やショートステイを組み合わせて時間をつなぐことになります。
ただ、これらは毎日安定して使えるものではありません。
結果として、日中の場所はあっても、夕方まで通して働けないという現実が残ります。
さらに、帰宅時にヘルパーさんに自宅で受け取ってもらう方法があっても、自治体や支給決定の考え方によっては、親の就労中の見守りが制度の対象外となり、実費負担になる場合があります。
そうなると、制度上は方法があっても、日常的に使い続けるのは簡単ではありません。
外から見ると「日中の場所もある」「移動支援もある」「ショートステイもある」と見えるかもしれません。
でも現実には、それらが毎日、切れ目なく、負担なく使えるわけではない。
この差が、そのまま親の就労の難しさにつながっています。
そもそも夕方のヘルパーさんがいない
さらに深刻なのは、人手不足です。
夕方の時間帯に対応できるヘルパーさんが少なく、頼みたくても頼めない。
制度の有無以前に、担い手がいないために生活が回らない、という壁があります。
私自身も夕方対応をしてくれるヘルパーさんを探していますが、なかなか見つからず、半年以上経っています。
制度上の選択肢はあっても、担い手がいなければ機能しない。
この現実が、「18歳の壁」をさらに高く、厚くしているように感じます。
預け先の問題というと、施設や制度の数に目が向きがちです。
でも実際には、支える人が足りているかどうかまで含めて考えないと、生活はつながりません。
相談窓口や人間関係がリセットされる負担も大きい
18歳の壁は、単にサービスの種類が変わるだけではありません。
長く関わってくれた相談支援専門員さんや事業所のスタッフさんとの関係が変わり、本人の特性や暮らし方を、また一から説明し直す場面も出てきます。
これは制度の資料には出にくい部分ですが、親にとってはかなり大きな負担です。
生活面の調整だけでも大変なのに、説明、調整、相談先の探し直しまで重なると、心理的にも時間的にもかなり厳しくなります。
18歳以降の支援を考えるときは、サービスの数だけではなく、人間関係や相談体制が途切れないことも大切だと感じます。
国の動きは「一歩前進」だが、まだ生活に直結する段階ではない
国も少しずつ動き始めています。
厚生労働省の2024年度障害福祉サービス等報酬改定では、放課後等デイサービスに延長支援加算が位置づけられています。これは、少なくとも児童期において、長い支援時間への評価が制度上あることを示しています。
また、2026年度概算要求では、「特別支援学校卒業後における生活介護利用モデルの作成」が新規事業として盛り込まれています。
これは、卒業後の生活介護のあり方に国が課題意識を持っていることの表れだと思います。
ただし、ここで注意したいのは、これがそのまま「放課後等デイサービスの成人版」が制度化される、という意味ではないことです。
現時点で確認できる公的資料では、そこまで明示されてはいません。
つまり、国も必要性は見始めている。
でも、家庭が本当に必要としている「今日と明日の生活が実際に回る仕組み」まで、まだ十分には届いていない。
そういう段階なのだと思います。
「行き先がある」と「生活が回る」は違う
この問題でいちばん伝えたいのは、ここです。
外から見ると、日中の場所はある。
移動支援もある。
ショートステイもある。
ヘルパーという仕組みもある。
でも現実には、
- 日中の利用先からいったん帰宅しなければならない
- 移動支援やショートステイは毎日安定して使えない
- 自宅での受け取り対応は実費になりやすい
- そもそも夕方対応のヘルパーさんが見つからない
その結果、親は夕方まで働けない。
これが、現場の生活です。
18歳以降の支援に必要なのは、単なる「場所の確保」ではなく、親が働き続けられる形で、日常生活を切れ目なく支えられるかどうかではないでしょうか。
おわりに
卒業はゴールではなく、新しい生活の始まりです。
18歳になったからといって、困りごとがなくなるわけではありません。
むしろその後に、就労、日中活動、夕方の空白、ヘルパー不足、相談先の再構築といった現実的な課題が、いっせいに重なってきます。
国会でこの問題が議論されるようになったのは大事な一歩です。
でも本当に必要なのは、議論されることではなく、家庭の生活が実際に回る仕組みにつながることだと思います。
障がい者の18歳以降の預け先問題は、家庭だけで抱える話ではなく、社会の仕組みとして向き合うべき問題だと感じています。
よかてんのひとりごと
私個人としては、放課後等デイサービスの成人版のような場所があれば助かるだろうなと思います。
学校卒業後も、夕方まで安心して過ごせる場所があれば、本人にとっても家族にとっても支えになるはずです。
でも一方で、みーちゃんはどう思うのかな、とも考えます。
親にとって助かる形が、本人にとって本当に心地よいのか。
ただ「預ける場所」が増えればいいという話でもない気がします。
みーちゃんが、一人の大人として「楽しい」と思える場所だと私も安心。
親が働けることと、本人が豊かな時間を過ごせること。
その両方がかなう支援があれば・・・と願っています。