親の相続は介護中の今から準備を。認知症で選択肢が消える前にやること【後見人の実体験】
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「親の相続なんて、まだ先の話」
そう思っていませんか。
私もそう思っていました。母の介護と重度知的障がいの娘の子育てで手いっぱいで、相続のことまで考える余裕はありませんでした。
でも、母の後見の申立てを経験した今、はっきり言えることがあります。
相続の準備は、親が元気なうちにしかできないことだらけです。
この記事を読むと、次の3つがわかります。
- なぜ「元気なうち」でないと間に合わないのか(私が実際にぶつかった壁)
- 親が元気なうちにできる準備5つ
- すでに介護が始まっていても、今からできること
書いているのは、要介護5の母の在宅介護をしながら、母の成年後見の申立てを経験した現役の介護福祉士です。
制度の壁に実際にぶつかった経験から、正直にお伝えします。
結論:相続の準備は「親が元気なうち」が9割です
最初に結論です。
相続の準備で大事なことのほとんどは、親に判断能力があるうちにしかできません。
- 遺言を書く
- 任意後見の契約をする
- 生前贈与をする
- 自宅を売る・名義を整理する
- 「お金や家をどうしたいか」を本人の口から聞く
ぜんぶ、本人が自分で判断できることが前提です。
認知症が進んでからでは、どれもできなくなるか、とても難しくなります。
「まだ早い」と思っているうちが、実は一番のやりどきです。
判断能力がなくなると、選択肢が消えます(私がぶつかった壁)
きれいごとではなく、私の実体験を話します。
私は、一人暮らしの母を自分の住む団地の近くに引っ越しさせたくて、母の自宅の売却を考えました。
でも、ここで壁にぶつかりました。
母が自分で売買契約を判断できない状態だと、家族でも勝手に家を売ることはできないのです。
家を売るには、成年後見人が必要でした。
そして後見制度を調べるほど、知らなかったことが出てきました。
- 一度申立てると、取下げは簡単ではない
- 一度後見人がつくと、原則として本人が亡くなるまで続くことが多い
- 専門職が後見人になると、報酬が本人の財産から払われ続ける
「家を売るためだけに、ちょっと使う」ということができない制度なのです。
母がまだ元気なうちに、住まいのこと、家の名義のこと、将来のお金のことを相談しておけば、もっと選択肢がありました。
このときの体験は、こちらの記事にくわしく書いています。
→成年後見の申立て前に確認してほしいこと。母の自宅売却で弁護士に相談して思ったこと
相続も、まったく同じ構造です。
遺言も、任意後見も、生前贈与も、「本人の判断能力」が前提。
認知症が進んだ瞬間に、打てる手が一気に減ります。
だからこの記事では、「元気なうちにやること」と「介護が始まってからでもできること」を分けてお伝えします。
親が元気なうちにできる準備5つ
むずかしいことから始める必要はありません。順番にどうぞ。
① 家族で話す
一番大事で、一番後回しにされがちなことです。
「縁起でもない」と思われそうで、切り出しにくい話題です。
でも、聞けるのは今だけです。
お盆やお正月など、家族が集まるタイミングで、「もしものとき、どうしたい?」と一度だけでも聞いてみてください。
本人の希望がわかっているだけで、あとの判断がぜんぶ楽になります。
② 財産目録を作る(ざっくりでOK)
銀行口座はどこにいくつあるのか。
保険は何に入っているのか。
家や土地の名義はどうなっているのか。
完璧な一覧でなくていいです。ノート1ページのメモで十分です。
亡くなった後に家族が一番苦労するのは、「どこに何があるか分からない」ことだからです。
③ 遺言について考えてもらう
遺言は、お金持ちだけのものではありません。
むしろ財産が少ないほうが、分け方でもめやすいと言われています。
書く・書かないは本人の自由ですが、「遺言という選択肢があるよ」と伝えることはできます。
④ 任意後見という制度を知っておく
任意後見は、本人が元気なうちに「将来、判断できなくなったら、この人に任せる」と自分で決めておける制度です。
私が使った(使わざるを得なかった)法定後見とちがい、誰に任せるかを本人が選べます。
ただし、契約できるのは判断能力があるうちだけ。ここでも「元気なうち」が条件です。
⑤ 専門家に早めに相談する
名義、税金、遺言、後見。
それぞれ専門家がちがい、素人判断で動くと、あとで別の問題が起きることがあります。
私は「もっと早く相談しておけば」と何度も思いました。
相談だけなら無料でできる窓口も多いので、「問題が起きてから」ではなく「問題が起きる前」に使ってください。
すでに介護が始まっていても、できることはあります
「もう認知症が始まっている。手遅れですか?」
そう感じた方も、あきらめないでください。
私自身がこの立場です。今からでもできることは、ちゃんとあります。
① 財産と契約を把握する
通帳、保険証券、年金の書類、家の権利証。
実家のどこに何があるか、把握しておきましょう。
本人に判断能力がなくても、「家族が場所を知っている」だけで、その後の手続きの大変さがまったく違います。
② 相続人が誰かを確認しておく
相続人は「配偶者と子ども」だけとは限りません。
親に前の結婚での子どもがいたり、子どもがいない場合はきょうだいが相続人になったりします。
誰が相続人になるのかを先に知っておくと、後でもめる芽を早く見つけられます。
③ 相続税がかかりそうか、目安を知る
相続税には基礎控除があります。
3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数
例えば相続人が2人なら、4,200万円までは相続税がかかりません。
「うちは関係なさそう」とわかるだけでも、不安がひとつ減ります。
逆に超えそうなら、early(早め)に専門家へ。打てる手が残っているうちに相談するのが鉄則です。
④ 亡くなった後の手続きの流れを知っておく
次の章で説明しますが、相続の手続きには期限があります。
流れを一度読んでおくだけで、いざという時のパニックが減ります。
相続が発生したら:期限のある手続き
ここが、私が一番伝えたい現実です。
| 手続き | 期限 |
|---|---|
| 相続放棄・限定承認 | 3ヶ月以内 |
| 準確定申告(亡くなった人の確定申告) | 4ヶ月以内 |
| 相続税の申告・納付 | 10ヶ月以内 |
数字だけ見ると「余裕がある」と思うかもしれません。
でも想像してみてください。
長い介護が終わった直後。お葬式、役所の手続き、家の片付け。
心も体もヘトヘトの状態で、この時計が走り出すのです。
「介護を頑張った人ほど、相続で倒れる」——大げさではなく、本当にある話です。
ひとりで抱えないでください
介護をしている人は、がんばり屋さんが多いです。
「親のことだから、自分でやらないと」と、相続まで全部背負おうとします。
でも、相続税の申告や相続手続きは、専門家に無料で相談できます。
無料相談で「うちの場合、何をいつまでにやればいいか」の地図をもらうだけでも、心の重さが全然違います。
相続税の申告や相続手続きをまるごと任せられる、税理士法人などの専門家による無料相談はこちらです(対応地域:東京・神奈川・大阪・京都・兵庫)。
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介護で疲れた家族の代わりに、面倒な手続きを引き受けてもらう。
それは手抜きではなく、介護を最後までやりきった人の、正しい休み方だと私は思います。
よくある質問
Q. うちは財産が少ないから、関係ないですよね?
いいえ、手続きは発生します。
相続税がかからなくても、銀行口座の解約、家の名義変更(相続登記)などの手続きは必要です。
しかも相続登記は義務化されています。「財産が少ない=何もしなくていい」ではありません。
Q. きょうだいで揉めないか心配です
揉めごとの多くは、金額より「気持ち」から始まります。
「介護を全部やったのは私なのに」「何も聞かされていなかった」——。
だからこそ、親が元気なうちの家族会議と、介護の記録(お金の出入りのメモ)が効きます。
私も、母のお金の出入りをノートと明細で記録するようにしていますが、これは家族間の信頼を守る仕組みでもあると感じています。
Q. 認知症の親の口座は、どうなりますか?
本人に判断能力がないと、たとえ家族でも、本人の口座から自由にお金を引き出すことは原則できません。
本格的に管理が必要になると、成年後見制度の利用を求められることが多いです。
ここでも「元気なうちの備え」が効いてきます。
よかてんのひとりごと
母の後見の申立て書類を作りながら、何度も思ったことがあります。
「お母さん、元気なうちに、もっと聞いておけばよかった」
家のこと。お金のこと。これからどう暮らしたいか。
母が自分の言葉で話せるうちに聞いていたら、選べた道がたくさんありました。
いま、母は私に何かを伝えることがむずかしくなりました。
だから私は、母が残した通帳や書類から、母の暮らしを読み取るような毎日です。
この記事を読んでいるあなたの親御さんが、まだ自分の言葉で話せるなら。
どうか、今夜でも電話して、何気ない話のついでに聞いてみてください。
それは相続の準備というより、親の人生の話を聞ける、残り少ない機会だからです。
まとめ:「まだ早い」が、一番危ない
最後に、この記事のまとめです。
- 相続準備の9割は、親に判断能力があるうちにしかできない
- 元気なうちにやること:家族で話す・財産目録・遺言・任意後見・早めの相談
- 介護が始まっていてもできること:財産の把握・相続人の確認・税の目安・流れの予習
- 相続発生後は、3ヶ月・4ヶ月・10ヶ月の期限が走り出す
- ひとりで抱えず、無料相談を使う
相続の準備は、縁起の悪い話ではありません。
親が積み上げてきた人生を、ちゃんと受け取るための準備です。
「まだ早い」と感じた今日が、たぶん一番早く動ける日です。
相続アシスト
※本記事は一般的な情報をまとめたものです。個別の税務・法律の判断は、必ず税理士・弁護士などの専門家にご相談ください。
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