親が認知症になると家の名義変更・売却はできない?後見人になった私の全記録【シリーズまとめ】
「親が認知症になったから、家の名義を変えたい」 「実家を売って、介護のお金にしたい」
そう思って調べ始めた方へ。
私も同じでした。母の自宅を売却する必要があり、調べて、弁護士に相談して、家庭裁判所に申立てをして。2026年6月、母の成年後見人に選任されました。
この記事は、その一連の記録(全9記事)のまとめです。「名義変更できるの?」という最初の疑問への答えと、申立てから後見人になるまでの流れが、この1記事でわかります。
まず結論
- 認知症が進んで判断能力(意思能力)を欠く状態になると、本人による名義変更や売却の契約はできません。意思能力のない状態でした契約は、民法上無効とされているからです
- その状態で親の財産を動かす法的なルートは、成年後見制度です
- ただし、後見人になっても家族への名義変更(贈与)は基本的に認められません。後見人はあくまで「本人の財産を守る」立場だからです
- 売却は「本人のため」なら可能です(施設入居費や介護費用にあてる等)。自宅(居住用不動産)を売る場合は、家庭裁判所の許可が必要です
つまり「名義変更したい」の中身が家族への贈与なら、認知症が進んでからでは原則できません。「本人の介護費用のために売りたい」なら、成年後見制度で道が開けます。
「認知症=もう何もできない」ではない
ひとつ大事な補足です。
できるかどうかの分かれ目は「認知症かどうか」ではなく、「その契約を理解して判断する力(意思能力)があるかどうか」です。
認知症でも軽度で、本人が内容を理解して判断できる状態なら、名義変更や売却ができる場合もあります。逆に言うと、進行してからでは選択肢がどんどん消えていくということ。「まだ大丈夫」と思っているうちが、動けるうちです。
うちの場合。自宅売却のために、後見人への道を選んだ
うちは、母の自宅を売却する必要がありました。
でも母は認知症で要介護5。本人が契約できる状態ではありません。弁護士に相談して分かったのは、「成年後見人を立てるしかない」ということでした。
そのときの相談内容と、申立て前に確認しておいてほしいことは、この記事に書いています。
→ 認知症の親の後見人申立てへ⑥ 後見の申立て前に確認してほしいこと。母の自宅売却で弁護士に相談して思ったこと
申立てから後見人になるまでの全記録【9記事マップ】
私が実際にたどった流れを、時系列でまとめます。詳細は各記事へ。
準備編:診断書の取得(①②)
後見の申立てには、医師の診断書が必要です。検査前の書類準備で驚いたこと、認知症検査当日の流れと診断結果を書きました。
書類編:必要書類を集める(③④)
「登記されていないことの証明書」という聞き慣れない書類が必要になります。法務局の支局では取れないという落とし穴で、私は一度無駄足を踏みました。書類のチェック欄の間違いにも注意です。
- 認知症の親の後見人申立てへ③ 後見人申請、法務局で詰まった話。「登記されていないことの証明書」は支局では取れません
- 認知症の親の後見人申立てへ④ 後見人申請書類を提出。「登記されていないことの証明書」チェック欄の間違いに注意
申立て・面談編:家庭裁判所とのやりとり(⑤⑥⑦)
書類を提出したその日に、家裁から電話が来ました。面談(受理面接)の日程調整と持ち物、当日何を聞かれたか、30分で終わった面談のリアルを書いています。
選任編:後見人に選ばれて、最初にやること(⑧⑨)
2026年6月、家庭裁判所から書類が届き、私が母の成年後見人に選任されました。選ばれたあと最初の仕事は、財産目録と収支予定表の作成です。
後見人になる前に知っておいてほしいこと
実際にやってみて、そして調べて分かった注意点です。
- 一度始めると、途中でやめられません。 原則、本人が亡くなるか判断能力が回復するまで続きます
- 後見人を選ぶのは家庭裁判所です。 家族が候補になれますが、必ず選ばれるとは限らず、弁護士や司法書士などの専門職が選ばれることもあります。その場合は報酬(目安は月2万円〜。資産額などで変わります)がかかり続けます
- 家族が自由にお金や不動産を動かせる制度ではありません。 家庭裁判所の監督のもと、「本人のため」にしか使えません
- 制度の運用や必要書類は地域・時期で変わることがあります。必ず管轄の家庭裁判所や専門家に最新の情報を確認してください
【売却のその後について:自宅売却の許可手続きなど、進んだら追記・リンク。現時点で書けることがなければこの【】は削除】
まだ判断能力があるうちなら、他の選択肢もある
もし親御さんがまだ元気なら、あるいは認知症でも軽度なら、後見以外の道があります。
- 生前贈与(元気なうちに名義を移す。贈与税などに注意)
- 任意後見契約(将来に備えて、本人が元気なうちに後見人を決めておく)
- 家族信託(財産の管理を家族に託す契約。家裁の許可なしで売却できる設計も可能)
どれも「判断能力があるうち」にしかできません。うちはその段階を過ぎてから動いたので、法定後見の一択でした。迷っている方は、早めに司法書士や弁護士に相談することをおすすめします。
まとめ
- 判断能力を欠いてからでは、本人による名義変更・売却はできない
- 家族への名義変更(贈与)は、後見人になっても基本できない
- 本人のための売却は、成年後見制度+家裁の許可で可能
- 後見は「途中でやめられない」制度。申立て前に⑥を読んでほしい
- まだ間に合う人は、元気なうちの対策(生前贈与・任意後見・家族信託)を
よかてんのひとりごと
先日、母宛の「本人限定受取郵便」を、私の最寄りの郵便局に転送して受け取る手続きをしました。
持って行ったのは、母の介護保険証と私の身分証明書。母は免許証もマイナンバーカードも持っていません。
小さな郵便局だったからか、母と私が本当に親子なのか、質問をいくつか受けました。それでも無事に受け取れたのですが、「本局だと、お母様の委任状がないと受け取れません」と言われて。
でも母は、委任状が書ける状態ではないんですよね。郵便物ひとつで、この面倒くささ。
そこでふと思いました。「あれ、後見人なら受け取れるのでは?」
調べてみたら、日本郵便のサイトにも、成年後見人に配達することがあると書いてありました。次からは後見人として受け取れそうです。
制限や手間の話ばかりしてきたけれど、後見人になって便利なこともある。そう思えた出来事でした。
シリーズ全記事- 認知症の親の後見人申立てへ① 検査前に準備した書類と問診票に驚いた話
- 認知症の親の後見人申立てへ② 認知症検査に付き添った当日の流れと診断結果
- 認知症の親の後見人申立てへ③ 後見人申請、法務局で詰まった話。「登記されていないことの証明書」は支局では取れません
- 認知症の親の後見人申立てへ④ 後見人申請書類を提出。「登記されていないことの証明書」チェック欄の間違いに注意
- 認知症の親の後見人申立てへ⑤ 申請当日に家裁から電話!面談日程と持参書類まとめ
- 認知症の親の後見人申立てへ⑥ 後見の申立て前に確認してほしいこと。母の自宅売却で弁護士に相談して思ったこと
- 認知症の親の後見人申立てへ⑦ 後見の面談(受理面接)は何を聞かれる?30分で終わった当日の流れと持ち物【実体験】
- 認知症の親の成年後見⑧ 私が母の成年後見人に選任されました。正式就任は2週間後
- 認知症の親の成年後見⑨ 後見人に選ばれたあと最初にやること。財産目録・収支予定表の準備を始めました