親の年金が足りない…高齢者が生活保護を受ける条件・基準・申請方法【後見人の私が調べたこと】
「年金だけでは足りず、預金が少しずつ目減りして、底が見えてきた──」
「親の年金だけでは、どう計算しても生活費が足りない」
「生活保護って、年金をもらっていても受けられるの?」
わが家も、要介護5・認知症の母の在宅介護をする中で、この問題に直面しています。
この記事を読むと、次のことがわかります。
- 年金をもらっていても生活保護を受けられる仕組み
- 生活保護を受けるための4つの条件
- 高齢の親のケースで気になる「持ち家・預貯金・親族への連絡」の扱い
- 申請から決定までの具体的な流れ
同じように「親の年金が足りない」と悩む方に向けて、家族として調べた内容を整理しました。
結論:年金があっても、足りない分は生活保護で補える
まず結論です。年金をもらっていても、生活保護は受けられます。
生活保護は「年金がある人は対象外」という制度ではありません。国が定める「最低生活費」に対して、年金などの収入が足りない場合に、その差額が保護費として支給される仕組みです。
計算式はシンプルです。
生活保護費 = 最低生活費 − 収入(年金など)
たとえば最低生活費が月12万円で、年金が月8万円なら、差額の4万円が支給されるイメージです。
「年金をもらっているから無理」とあきらめる前に、まずは親の年金額と、住んでいる地域の最低生活費を比べてみることが第一歩です。
生活保護を受けるための4つの条件
生活保護は「最後のセーフティネット」なので、受給には条件があります。厚生労働省が示す前提は、次の4つです。
1. 収入が最低生活費より少ないこと
年金・給与・仕送りなど、すべての収入を合計しても最低生活費に届かないことが基本条件です。
2. 活用できる資産がないこと
預貯金や、生活に使っていない土地・家屋などがあれば、先に生活費に充てる必要があります。
ただし「すべての財産を手放せ」という意味ではありません。今住んでいる持ち家は、原則そのまま住み続けられます(資産価値が高い場合は、家を担保にお金を借りる制度の利用を先に求められることがあります)。
3. 働ける場合は能力を活用すること
働ける人は働くことが前提ですが、高齢や病気、要介護状態で働けない場合はこの条件で不利になることはありません。
4. 他の制度を先に活用すること
年金や各種手当など、他に受けられる給付があれば、そちらが優先されます。もらい忘れている年金(遺族年金など)がないかも、申請時に確認されます。
この4つを満たしたうえで、なお収入が最低生活費に届かない場合に、保護が適用されます。
最低生活費はいくら?地域と年齢で変わる
「最低生活費」は全国一律ではなく、住んでいる地域(級地)・年齢・世帯構成によって変わります。
高齢の単身世帯の場合、主に次の2つで構成されます。
- 生活扶助:食費・光熱費など日常の生活費
- 住宅扶助:家賃(地域ごとに上限あり)
このほか、障害がある場合の加算や、冬の暖房費(冬季加算)などが上乗せされることもあります。
都市部の単身高齢者なら、生活扶助と住宅扶助を合わせておおむね月10万〜13万円前後が目安ですが、地域差が大きいため、正確な金額は福祉事務所での相談か、厚生労働省の生活扶助基準額の算出方法(令和8年4月・PDF)で確認するのが確実です。制度全体の公式情報は厚生労働省「生活保護制度」にまとまっています。
ポイントは、親の年金月額がこのラインを下回っていれば、申請を検討する価値があるということです。
高齢の親のケースで気になる3つの疑問
親の生活保護を考えるとき、家族として引っかかりやすいポイントを整理します。
持ち家に住み続けられる?
前述のとおり、**居住用の持ち家は原則保有が認められます。**売却を求められるのは、住んでいない不動産や、資産価値が特に高い場合です。
預貯金はゼロでないとダメ?
完全にゼロである必要はありませんが、当面の生活費を大きく超える預貯金があると、まずそれを使うよう求められます。目安として、最低生活費の半月〜1か月分程度を超える貯金があると、受給開始が難しくなる傾向があります。
子どもに「援助できますか」と連絡が行く?(扶養照会)
申請すると、親・子・きょうだいなど3親等以内の親族に「援助できないか」を確認する扶養照会が行われることがあります。
ただし、ここは大事なポイントです。
- **親族の援助は「保護の要件」ではありません。**援助が期待できなくても保護は受けられます。
- 2021年の厚生労働省の通知で運用が緩和され、長期間音信不通・関係が著しく悪いなどの事情があれば、照会自体を省略できるようになりました。
- 家族が介護などですでに関わっている場合は、「金銭的な援助は難しい」と正直に回答すれば大丈夫です。援助できないことで親が不利になることはありません。
「子どもがいるから申請できない」は誤解です。ここであきらめてしまう方が本当に多いので、強調しておきます。
生活保護で受けられる主な扶助(高齢者の場合)
保護が決定すると、生活費以外にも次のような扶助が受けられます。高齢の親にとって特に大きいのは、医療と介護です。
- 医療扶助:医療費の自己負担が原則なくなる(訪問診療も対象)
- 介護扶助:介護保険サービスの自己負担分がカバーされる
- 葬祭扶助:葬祭費用の扶助
要介護の親の場合、毎月の医療費・介護費の負担がなくなるだけでも、家計への影響はかなり大きくなります。
申請の流れ|5つのステップ
申請から受給までの基本的な流れです。
ステップ1:福祉事務所に相談する
窓口は、**親が住んでいる地域の福祉事務所(市区町村の生活保護担当課)**です。まずは相談から始まり、制度の説明や、他に使える制度がないかの確認が行われます。
ステップ2:申請書を提出する
申請書は窓口にあります。申請は国民の権利なので、窓口で「まず相談を」と言われても、申請の意思を伝えれば受け付けてもらえます。
本人が入院中・要介護などで窓口に行けない場合は、扶養義務者(子どもなど)や同居の親族が代わりに申請できます。
ステップ3:調査を受ける
家庭訪問による生活状況の調査、預貯金・保険・不動産などの資産調査、年金など収入の調査が行われます。
ステップ4:決定通知を受け取る
申請から**原則14日以内(調査に時間がかかる場合でも最長30日以内)**に、開始か却下かが文書で通知されます。
ステップ5:受給開始
受給中は毎月の収入申告と、ケースワーカーによる年数回の訪問があります。
申請前に準備しておくとスムーズなもの
書類がそろっていなくても申請自体はできますが、次のものがあると調査が早く進みます。
- 年金証書・年金振込通知書
- 預金通帳(直近の記帳をしておく)
- 賃貸なら賃貸借契約書
- 保険証・介護保険証
- 生命保険の証券(あれば)
- 印鑑
親が認知症などで手続きが難しい場合は、地域包括支援センターやケアマネジャーに相談すると、福祉事務所との橋渡しをしてもらえることがあります。
私自身、生活保護を申請した経験があります
実は私自身、過去に生活保護を申請した経験があります。
だからこそ言えるのですが、窓口での相談も、調査も、実際に経験してみると「事前に知っているかどうか」で心の負担がまったく違います。
申請したときの流れや、窓口で聞かれたこと、そのときの正直な気持ちは、こちらの記事に詳しく書いています。これから親の申請を考えている方にも、参考になるはずです。
まとめ:年金が足りないなら、まず「差額」を計算しよう
最後にポイントをおさらいします。
- 年金があっても生活保護は受けられる(足りない分の差額支給)
- 持ち家は原則住み続けられる
- 親族への扶養照会は緩和済み。「子どもがいるから無理」は誤解
- 窓口は親の住所地の福祉事務所。申請は家族でも可能
- 決定は原則14日以内
生活保護は、役所の窓口でくじけそうになる場面もあると聞きます。でも大丈夫。こちとら介護保険・障害福祉・成年後見と、書類の山を乗り越えてきた歴戦の家族です。役所の書類がなんぼのもんじゃい、の精神でいきましょう。
……と言いつつ、私も申請書を前にしたら手が震えるかもしれませんが。その時はまた、このブログで正直にご報告します。